相続財産をあらかじめ整理するポイント
新風リーガルサービス
代表 上羽崇之 より
相続が開始すると、相続人はたとえどんな財産であっても引き継がなくてはいけません。
現金や預貯金はもらって困るものではありませんが、不動産や自社株式などになってくると、人によっては将来の管理や処分の「面倒くささ」の方が大きく、あまり引き継ぎたくないという声もよく聞きます。
また、相続人はマイナスの財産である借金なども引き継ぐことになります。
つまり、相続人は引き継ぐ財産を自分で選べるわけではありません。
例えば「預金と投資信託を引き継いで、これまで一族が代々引き継いできた実家の不動産はいらない。借金も当然いらない。」なんてことができないのです。
実際のところ、都市部への移動が多く、自分たちが住みやすいところにマイホームを構える人が多い中、実家の不動産の管理が負担となるケースは多いです。
処分したくても買い手が付かずに、相続後に処分が難しい地域もあります。
そんなときは、空き家として固定資産税だけを支払ったり、隣近所に迷惑をかけないか管理もしなければいけません。
財産は価値があるものですが、持っているだけでその責任も生じてしまいます。
時代や生活スタイルはどんどん変わっていきます。
それに合わせて、それぞれの人が財産に感じる価値も変わっていくでしょう。
このように、財産はもらってうれしいものばかりではありません。
たとえ金銭的な価値があっても、それ以上に負担を感じる相続財産もあれば、
実際にはお金に換えられずに負担だけを引き継いでいかないといけない相続財産もあります。
あらかじめ相続人の側が「何を引き継がないといけないのか?」が分かっていると、今ならその対策も可能ですし、その時間も十分にあります。
でも、一番難しいのは、親と子でしばしばその認識に大きなズレがあることです。
子どもは、面倒も含めて色々なことを心配しているのに、
親の方も良かれと思って、色々な財産も引き継ごうとしている。
これから、相続税も含めて相続の対策を行っていくためには、
この親と子の間で「気持ちのすり合わせ」を行う必要があります。
話し合うきっかけを作るには?
失敗しがちなのは「とりあえず話す」ということです。
この場合は、曖昧な話でお互いが感情的になり、、、
逆に、話し合いが長期間それ以上進まなくなることもあります。
うまくきっかけを作るには、誰が見ても明らかな具体的な資料を準備するのがひとつの良い方法です。第三者を交えるのも、冷静になって話ができることも多いです。
その具体的な資料として大変役立つのが「財産のリスト」です。
そんなに大層なものでなくても、どんな財産があるか、どれくらいの金額か、ということが分かれば大丈夫です。
相続財産になるものには例えば次のようなものがあります。
【お金に換えやすいもの】
お金そのもの、または処分してお金に換えやすい相続財産は、その特徴を活かして財産をそれぞれの相続人に分ける遺産分割がしやすく、またそのまま相続税の納税資金にも使えます。
- 現金
- 預貯金
- 有価証券
※上場株式、投資信託、ゴルフ会員権、など - 生命保険(死亡保険金)、死亡退職金
死亡保険金は、厳密には相続財産ではありませんが、相続税では同じように扱われます。
この性質を活用して相続税対策だけでなく、争続対策にも活用できるものです。
【お金に換えにくいもの】
処分に時間がかかる、処分できない、といったお金に換えにくい相続財産は、個性のある財産が多く、金銭的な価値よりも、それぞれの家族にとって意味を持つ財産であることが多いのが特徴です。
遺産分割の際に誰が引き継ぐかが問題になりやすく、現金のようにそのまま半分に分けたりでき ませんので、相続人の間でどのように分けるのが難しい財産です。
- 不動産
- 非上場株式
※自社株式が代表的
そもそも他人に売却できない割に、儲かっている会社だとその評価がとても高額になるのが特徴です。そして、自社株式は後継者以外にほとんど価値がありません。
通常の相続対策も含め、事業承継対策として取り組むことになります。
【マイナスの財産】
- 借金
代表的な住宅ローンは団体信用保険に入っておられるのがほとんどなので、亡くなると同時に保険金で全額返済されますので、計算に入れません。(念のため確認しておいてください)
事業用の借金や、カードローンは相続人に引き継がれます。
- 保証人
保証人に請求がくるのは滞納があってからなので、発見が大変難しいものです。
資料としては契約書ですが、残っていないことも多いです。
事前に本人に必ず確認しておいた方がいいポイントです。
また、誰かの保証人になっていることをご家族に教えるのは義務と言ってもいいです。
この機会に、家族でこれらを整理して、話し合いのきっかけにしましょう。
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