親族後見人が報酬の付与を受けるメリットとその方法
ご親族の成年後見人(親族後見人)であっても
報酬を受け取れることはご存知ですか??
司法書士や弁護士などの第三者後見人であれば、
仕事として成年後見人に就任していますので
報酬が発生することはよく知られています。
でも、法律上では親族後見人と第三者後見人を
一切区別していませんので
報酬を受け取ることができることになっています。
また、親族後見人による後見事務と
第三者後見人による後見事務、
なんとなく第三者後見人の方が
注意深く後見事務をしないといけない印象がありますが、
実は、その仕事の内容や責任について特に違いはありません。
後見事務は成年後見人という立場に課せられた仕事です。
逆にいえば親族後見人であっても、
全く知らない他人の財産を預っているのと同じように
財産管理をしなければいけないのです。
「家族だから」「親族だから」といって
家庭裁判所は後見事務を甘く見てはくれませんし、
あなたが親族後見人であればすでにご存知だと思いますが、
成年後見人の仕事は決して楽なものではありません。
さて、親族後見人の場合、
報酬が受け取れることを知っても
次のような理由で実際に報酬付与の申立てが
されることはあまりありません。
・親族なので報酬はいらない
・もらえるならもらいたいけれど、被後見人にあまり財産がない
・なんとなく後ろめたい
親族後見人が報酬の付与を受けるのは任意です。
しかし、上記の重い責任の正当な対価として
報酬を受け取ることは決して悪いことではありません。
実際に、私たちは親族後見人の方に
報酬付与の申立てをご案内することもあります。
もちろん「報酬なんていらない」というお考えであれば
無理に報酬を受け取る必要はありません。
でも、もしこれまで
報酬請求できることを知らなかった、
知っていても感情的に後ろめたい、
といった理由で報酬請求をしていなかったのであれば、
親族後見人のプラスの感情を引き出す報酬付与の申立て
をお勧めします。
「負の感情」を払拭する親族後見人の報酬付与
「報酬」と聞くと
金銭的な面ばかりに目がいきがちですが、
親族後見人として報酬の付与を受けることで
それ以外にもメリットがあります。
「やった人にしか分からない」
親族後見人の苦労が報われます
今現在親族後見人をされている方なら
お分かりだと思いますが、
後見事務は端からは簡単に見えても
実は結構大変です。
・1円単位の収支の管理や細かい資料の保管
・仕事中、家事の途中に施設の都合で呼び出される
・家庭裁判所がうるさく、細かい部分をいつも注意される
・毎年の家庭裁判所への財産状況や収支の報告
これらの作業に時間や手間を取られるだけでなく、
家庭裁判所とのやり取りにストレスを感じて
心の負担になっている方がほとんどだと思います。
親族後見人から報酬付与の申立てをすることで、
そのストレスや心の負担を少しでも軽減することができます。
他のご親族に対する不満や不公平感が軽減されます
自分で「成年後見人としての報酬は請求しない」
と選択するのは全く問題ありませんが、
「家族だから」「親族だから」という理由で
報酬請求しなくて当たり前、タダ働きで当たり前、
という考えを他の親族から押し付けられていることもあります。
例えば、奥さんが旦那様側のご親族の成年後見人を
されている(やらされている?)ケースに多く、
このような他のご親族からの扱いも
親族後見人のストレスや不満を大きくする原因です。
仕事の対価として堂々と報酬を受け取れば、
このような不満を軽減し、親族後見人も納得して
今後の後見事務に取り組むことができるでしょう。
他の親族からはドライに思われるかもしれませんが、
このような方は報酬請求しようがしまいが
これからも文句を言うものです。
家庭裁判所に怒られず、必要な生活費等を捻出できます
すでにご経験されているかもしれませんが、
ご本人様と同居されているような場合、
家庭裁判所はご家族の扶養費や生活費にも
口を出してくることがあります。
「ご家族でも一部は負担してください」
「こんなに生活費は必要ですか??」
これまで当たり前にやってきたことなのに、
まるで悪者にされている気分を味わっている
親族後見人はとても多いです。
親族後見人の報酬は仕事に対する正当な対価です。
受け取った報酬は生活費などご家族のために、
自由に使用することができます。
親族後見人の報酬については使いみちの報告も不要です
家庭裁判所に一切口出しされることもありません。
報酬付与の申立はあなたからプラスの感情を引き出す
このように、親族後見人による報酬請求をすると
金銭的な面ではなく自分を感情的に納得させることができます。
これまで家庭裁判所とのやり取りにストレスや
他の親族の方との不公平感を感じているとすれば、
これからはその負の感情を払拭して、
後見事務に取り組むことができるでしょう。
それは親族後見人であるあなたにとっても、
被後見人であるご本人様にとってもプラスになるはずです。
その他にも、、、親族後見人が相続人であれば
親族後見人の報酬付与の申立ては、
ほんの少しだけ相続税対策になります。
成年後見が開始すると生前贈与ができません。
少しずつ親族後見人の報酬として受け取ることで
確実にご家族に移していけるメリットもあります。
また、単純に自分のお小遣いにもできます。
受け取った報酬の使いみちは本当に自由です。
親族後見人の報酬の目安
成年後見人の報酬の目安は??
成年後見人の報酬は基本報酬と付加報酬に分かれます。
基本報酬とは、財産管理自体に与えられる報酬。
付加報酬とは、不動産の売却や遺産分割協議など
特別な仕事1回につき与えられる報酬です。
昔はこれらの報酬の基準が公表されていませんでしたが、
最近では家庭裁判所も基本報酬については
報酬額の目安を出してくれています。
さて、基本報酬は、成年後見人が使った時間や仕事の難しさではなく
管理している財産額(流動資産の額※)で決定されます。
※流動資産とは現金・預貯金+投資信託・上場株式などの有価証券の合計
1,000万円以下・・・2万円/月
1,000万円を越え5,000万円以下・・・3~4万円/月
5,000万円を越える場合・・・5~6万円/月
付加報酬については取り扱う内容により
ケースバイケースといったところです。
概ね数万円~数十万円の範囲になると思います。
親族後見人の報酬の相場は??
親族後見人と第三者後見人で
報酬の額は異なるのでしょうか??
冒頭でお知らせしたように、
成年後見人という立場で同じ仕事をしていますので
原則として上記の報酬基準と変わらないと考えて良いと思います
実際に、これまで親族後見人の報酬請求を
お手伝いさせて頂いたケースでは
上記の基準で報酬が決定されています。
もちろん、家庭裁判所が独断で決めることなので
被後見人の財産額やその他の事情により
減額されるケースはあります。
しかし、それは第三者後見人でも一緒ですので
基本的には、成年後見人の報酬基準を当てはめて考えましょう。
親族後見人の報酬付与請求の注意点
成年後見人の報酬は勝手に取ってはいけない
成年後見人の報酬は
全て家庭裁判所が決定します。
親族後見人であろうが、
第三者後見人であろうが、
この点は変わりません。
成年後見人報酬付与申立書と添付資料を
家庭裁判所に提出することで、裁判官が
「後見事務の報酬として金○○万円を与える」
という風に報酬の金額を決定してくれます。
その後、ご本人様の預金口座から
決められた報酬の額を出金して受け取ることになります。
くれぐれも親族後見人の方で
勝手に金額を決めて受け取らないようにしてください。
以前、私が後見監督人として経験したケースでは、
とある専門家の間違ったアドバイスにより
毎月数万円を不動産賃貸管理の報酬として
親族後見人に受領させていたことがありました。
このようなことをした場合、
受け取った報酬の返金は当然のことながら
最悪解任されるおそれもあります。
報酬は一括で請求??それとも毎年請求??
成年後見人の報酬請求のやり方は、
次の2つの方法があります。
・定期的に一定期間の報酬を請求(毎年1年分を請求など)
・後見終了時に就任していた全期間の報酬を請求
次の項目で詳しく解説しますが、
課税の関係で親族後見人が報酬を請求する場合は
前者の方がほとんどの場合で税務上有利になると思います。
成年後見人の報酬には課税される
親族後見人の報酬は雑所得になります。
そのため、その他の収入との関係や
受け取った報酬の金額によっては
確定申告が必要となります。
なお、家庭裁判所が決定した報酬を
収入に計上すべき時期は
国税庁から見解が出ています。
結論としては、
家庭裁判所が報酬を決定したとき
とされています。
例えば、今年2年間の報酬を請求したとしても
去年に仕事をした部分の報酬も含めて、
親族後見人が今年に収入を得たことになります。
配偶者控除や扶養控除などを受けている場合は
1年間に大きな報酬を受けると
控除の対象から外れてしまいます。
家庭裁判所は税金について案内してくれないので
数年分を一度に受け取ってしまうと、
上記のように税務上不利にはたらくかもしれません。
受け取る親族後見人の報酬の予想を立て、
「毎年1回請求する」「2年に1回請求する」など
うまく期間を区切ってコントロールするようにしましょう。
親族後見人の報酬付与請求のやり方は??
管轄の家庭裁判所に報酬付与請求書と添付書類を提出
親族後見人が報酬付与の請求をする場合は、
管轄の家庭裁判所に次の書類を提出します。
1.報酬付与の申立書
2.報酬付与申立事情説明書
3.後見事務報告書※
4.財産目録※
5.収支報告書※
6.関係資料(預金通帳写し、領収書)※
7.収入印紙 800円
8.郵便切手 82円
※後見事務報告済の期間の報酬を請求する場合は
3から6の書類は不要
家庭裁判所で内容を審査の上、
後日郵便で報酬付与決定書が送付されてきます。
納得のいく報酬付与を受けるためには
報酬付与申立事情説明書の書き方も重要
実際のところ、成年後見人の報酬は
基本報酬の部分がほとんどです。
つまり、どれだけ時間や手間をかけて
大変な仕事をやり遂げても
原則として管理財産の額だけで判断されてしまいます。
そのため、少し決定された報酬額に
納得がいかないことがあるかもしれません。
その場合は、付加報酬を認めてもらうために
自分が親族後見人として行った大変な仕事の内容を
報酬付与申立事情説明書に具体的に記入しておきましょう。
必ずこれが認められるわけではありませんが、
困難な事情のある身上監護などについては
家庭裁判所が付加報酬として認めてくれる可能性があります。
不動産の売却や遺産分割協議など
大きな財産に関する仕事をした場合も
この事情説明書に記入しておきます。
なお、付加報酬が必要なければ
書かずに提出すればOKです。
あなたも報酬付与の申立てにチャレンジ
親族後見人として仕事をする負担、
特に、他人からでも目に見える作業以外の
ストレスや不満といった心の負担は
親族後見人であるあなた自身にしか分かりません。
報酬を受け取ることで、そのマイナスの感情を払拭し
あなたからプラスの感情を引き出すきっかになるでしょう。
後見事務はご親族のために行うことではありますが、
あなたが親族後見人として仕事をすることで
高齢者の財産を保護するという社会貢献にも繋がっています。
今後も親族後見人としてより良い後見事務を行うため
ぜひ、あなたも報酬付与の申立てにチャレンジしてみてください。
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