ひな形は損!自分でルールを作る任意後見契約の結び方



ひな形は損!自分でルールを作る任意後見契約の結び方写真

ご家族によっては大問題となる

成年後見制度のデメリット。

 

これを回避する方法のひとつとして

任意後見契約があります。

 

ただし、任意後見契約は

単に契約書を作れば良いものではなく

必ず公正証書で作成しなければいけません。

 

自分と任意後見人候補者だけで

任意後見の契約書に署名押印しただけでは

将来使うことができません。

 

結局、成年後見制度しか

利用できなくなってしまいます。

 

任意後見は法律で決められた制度なので、

その契約もこれにしたがって

準備しておく必要があるのです。

任意後見契約作成までのステップ


任意後見人候補者を選ぶ

 

任意後見人になるのに

特別な資格は必要ありません。

 

・ご家族

・司法書士、弁護士などの専門家

・NPO法人などの会社組織

 

などが任意後見人の引き受け手になります。

 

基本的にはご家族など

すでに強い信頼関係が築けている方を

選ぶことになると思います。

 

かといって、任意後見は片手間でできる仕事ではなく、

財産を預るという大きな責任が発生します。

 

任意後見を任せる方も当然ながら、

引き受ける側も安請け合いしないよう

どんな仕事をしないといけないか

また実際に任意後見ができるかどうか

お互いに話し合うようにしてください。

 

なお、身寄りのない方であれば、

司法書士などの専門家や法人組織などに

任意後見を引き受けてもらうことになります。

 

引き受けてもらえる条件や、

どんな方針で任意後見を行っているか

内部をよく確認するようにしましょう。

 

任意後見は強い信頼関係に基づく契約なので

信頼関係を築けるまでは

実際に任意後見契約を結ばないのが無難です。

 

個人と違い、法人は(健全な運営を行う限り)

死亡がありませんので、

安心して任せることができます。

 

ただし、どのような方が実際に

任意後見を担当されるかどうかは分かりません。

 

 

任意後見契約書案を準備する

 

任意後見契約の公正証書は、

公証人が内容を決めてくれるわけではありません。

 

任意後見を頼む人と任意後見人受任者の約束を

公正証書で書面化するイメージです。

 

もちろん一部テンプレート化はされていますが

個人個人で任意後見契約の内容は異なるはずなので

内容を自分たちでカスタマイズすべきです。

 

逆に適当に頼んでしまうと

テンプレートどおりのものしかできないので、

個別的な対応ができず、

任意後見に柔軟性がなくなってしまいます

 

下記のガイドラインを参考に

任意後見契約の設計を考えてみましょう。

 

任意後見契約の内容を決めるガイドライン

 

1.任意後見契約の類型は??

 

先日の記事でも触れたとおり、

任意後見契約には、財産管理が実際にスタートする時期に応じて

 

・将来型

・即効型

・移行型

 

の3つがあります。

 

即効型の任意後見契約は、

既に判断能力が低下しつつある場合に

利用を検討するものですので、

時間をかけて準備するような場合は

考えなくても良いでしょう。

 

将来型は、任意後見契約のみ

移行型は、財産管理契約+任意後見契約

 

将来型は判断能力が低下したときに

初めて任意後見人による財産管理がスタートします。

 

一方移行型は判断能力の低下がなくても

財産管理をスタートすることができます。

そして、その開始時期についてもルールを設定できます。

 

例えば、下記のような設計が考えられます。

 

・施設に入所したとき

・体が不自由になってきて、改めて財産管理をお願いしたとき

・すぐに任意後見人受任者による管理をスタートするが、

 日常使う預貯金は自分で管理する

 

このように、移行型の任意後見契約では

かなり自由度の高い柔軟な設計が可能です。

 

 

2.任意後見人の権限をどうするか??

 

全財産を管理される成年後見制度と違い、

任意後見契約では任意後見人の権限を選択できます。

 

「どの財産を管理してもらうか」

「どのような契約を代わりにしてもらうか」

 

このようなことについて

かなり詳細に決めることが可能です。

 

預貯金の管理はしてもらうけれど、

大切な不動産は処分して欲しくない

 

こんな希望にも対応ができます。

 

特に、遺言書で行き先の決まっている財産などがあれば、

その財産には任意後見人に処分する権限を与えないことで

ルールとして手を出せないようにすることができます。

 

このように任意後見契約では

人任せにするのではなく、

設計として財産管理をコントロールできます

 

この点も、よく考えて決めるようにしましょう。

任意後見契約書をテンプレートどおりに作ってしまうと

成年後見とほとんど変わらないルールになってしまいます

 

 

3.第三者を任意後見人に選ぶ場合は「見守り契約」を検討

 

もし専門家やNPO法人など

第三者を任意後見人に選ぶ場合は

定期的に自分の状態を確認してもらう約束として

「見守り契約」を含めるか検討しましょう。

 

任意後見は、本人の判断能力が低下した場合に

契約に基づき任意後見人受任者の判断で

家庭裁判所に申立てを行う手続です。

 

したがって、任意後見人受任者は

本人の状態を定期的に確認しておく必要があります。

 

それを定期的に面会する約束として含んでおくことで、

身寄りのない方でも安心して過ごすことができます。

 

これは口約束でなく、書面として残しておくことが重要です

 

 

4.その他細かい将来の生活や財産のことは??

 

「○○という施設に入りたい」

「可能な限り自宅で介護を受けれるようにして欲しい」

 

といった将来思い描いている生活のことや

 

「預貯金が足りなくなってきたら、

まずは上場株式ではなく投資信託から処分して欲しい」

「不動産は自宅以外であれば必要なら売却しても良い」

 

といった具体的な財産の管理・処分方法の指定がある場合、

 

これを任意後見契約に含めることもできますが、

契約時に詳しく決められないこともあります。

 

このような細かい内容については

後日変更するかもしれないこともあるでしょう。

 

任意後見契約の内容を追加・変更するには、

再度公証人役場で手続することになります。

 

手間やコストを考えると、あまり得策ではありません。

 

任意後見契約では、まず変更が起こらない

任意後見の大事な部分を直接内容に盛り込んでおいて、

これから決定したり変更したりするかもしれない

具体的な内容については、

後日なるべく変更しやすくしておくのがコツです。

 

よくご提案させて頂くのは、

任意後見契約の中で

 

任意後見契約書と別途、書面で

生活設計や財産管理についての指示が作成されている場合には、

任意後見人はこの内容に従って後見事務を行うというものです。

 

また、任意後見の状況をチェックする立場である

任意後見監督人の候補者も指定できるような設計をすることもあります。

(選ばれるかどうかは100%とはいえませんが)

 

 

このように、一部の決まりを除けば

任意後見契約はとても自由なものです。

 

任意後見契約に限らず、

契約書を決まったひな形やテンプレートどおりに

作成するイメージを持っている方が多いです。

 

任意後見契約は自分たちでルールを作れる

ということを頭にいれておきましょう。

 

 

公証人役場での必要書類を集める

 

公正証書を作成するには、

公証人役場に所定の必要書類を提出する必要があります。

 

契約書案が固まってきた段階で

下記の必要書類を集めておくとスムーズです。

 

【本人(任意後見を任せる人)】

・印鑑証明書

・戸籍謄本

・住民票

 

【任意後見受任者(任意後見を引き受ける人)】

・印鑑証明書

・住民票

 

※上記は全て発行から3か月以内のもの

 

 

【公証人役場の手数料】

・1つの任意後見契約につき 11,000円

※証書の枚数により、250円/1枚の加算有

・法務局に納める印紙代 2,600円

・法務局への登記嘱託料 1,400円

・書留郵便料 約540円

・正本謄本の作成手数料 250円×枚数

 

 

公証人役場に契約書案を送って契約日時を予約する

 

公正証書はいきなり公証人役場に行っても作ってくれません。

 

まずは近くの公証人役場に連絡をして、

出来上がった契約書案、集めた必要書類を提出します。

 

契約書案に基づいて公証人と詳細な打合せの後、

公正証書になる任意後見契約の最終文案を作成してもらいます。

 

当日、パソコンで打ち込んで作ってくれるわけではないので、

注意してください。

 

内容が確定すれば、本人と任意後見受任者の予定を合わせて

公正証書での任意後見契約書の作成日時を予約します。

 

 

予約日時に公証人役場に行く

 

当日は、お互い了解済みの決まった約束で

任意後見契約書が作成されるだけなので

文案と違いがないかを中心に注意すれば良いと思います。

 

実印と手数料を忘れないようにしましょう。

 

 

任意後見契約書作成ステップまとめ

 

・任意後見契約は必ず公正証書で結ぶ必要がある

・任意後見人受任者は本当に信頼できる人を選ぶ

・ひな形どおりに作るのではなく任意後見契約の中身が肝心

 

成年後見制度のデメリットを回避するために

任意後見契約を選択する場合は、

ご家族で使いやすいルールを作らなければ意味がありません。

 

ひな形どおりではなく、設計にこだわって

将来も今と同じような豊かな生活を実現しましょう。

 

 

 

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