後見人を自分で決めれる任意後見契約とは??



後見人を自分で決めれる任意後見契約とは??写真

前回の記事では、
成年後見制度の利用に関して
現場を知らないとあまり気付けない
注意点や問題点を解説しました。

成年後見制度が多くのご家族にとって問題になる訳は、
事前の準備をしていない限り、
いざというときに対応ができないことです。


逆に言えば、成年後見制度の実態を知り
きちんと対策さえしておけば、
成年後見人による財産管理で生じる問題は防げます。

ひいては将来の相続の場面でも
スムーズな財産の引継ぎができることになります。

さて、この成年後見制度の問題点を
解決する仕組みには下記の2つがあります。

1.任意後見
2.家族信託

ご家族の状況や、今後のプランに応じて
これらを使い分けたり、または併用することになります。

今回の記事では、任意後見を使うと
成年後見制度を利用したときと比べて
どのようなメリットがあるかお知らせします。

任意後見の3つのメリット

任意後見制度は、ただでさえ認知されていない
成年後見制度と比べてもさらにマイナーな制度で、
そもそもこんな制度があることも知らない方も多いかもしれません。

任意後見 = 自分で後見人を選んで、ルールも決める成年後見制度
というイメージです。

基本的には成年後見制度と似ていますが、
いくつかの場面で、成年後見制度と比べて
大きなメリットがあります。


1.後見人を自分で選べる

何と言っても、この点が一番の特徴であり大きなメリットです。

成年後見人は家庭裁判所が決めますので、
家族に成年後見人になってもらうことを希望しても
そのとおりに選ばれるとは限りません。

そして、その家庭裁判所の決定に
一切不服を申し立てることもできないのです。

成年後見人は、本人の財産に関して一切の代理権があります

ご家族の許可なく自由に財産を処分できますし、
家庭裁判所が了解すれば、
ご自宅であっても売却する権限があるのです。

もし知らない司法書士や弁護士が成年後見人に選ばれたら、、、
考えただけで恐ろしいですよね??

その点、任意後見では公正証書で
後見人になってもらう予定の方と
あらかじめ契約をしておくので
その方が絶対に後見人に選ばれることになります。

家庭裁判所はこの任意後見契約の内容に
逆らうことができません。

万が一のとき、ご家族など信頼できる方に
必ず後見人になってもらうことができます。

2.後見人の権限も選択できる

成年後見では、選択の余地なく
自動的に全財産について後見人が強い権限を持ってしまいます。

一方で、任意後見は事前に決めておく契約ですから、
後見人にやってもらうことを細かく決めることができます。

例えば、
・日常使う預貯金だけを管理してもらう
・大口の定期預金については管理はできない
・介護の契約や施設入所の契約を代わりにやってもらう
・一部の土地だけは必要なタイミングで後見人が処分できる
・自宅や賃貸不動産については後見人が勝手に処分できない

こんな少し複雑な仕組みにすることもできます。

つまり任意後見ではやってもらうことだけでなく
後見人が「できないこと」も決めておくことができるのです。

成年後見制度のように、
後見人に何もかも判断を任せるのが少し不安な方でも
このように任意後見では契約で
細かく内容を決めておけるので安心です。


3.ライフスタイルも自由に決めておける

成年後見人・任意後見人に関わらず、
財産管理以外の重要な仕事に身上監護があります。

身上監護とは、生活上の身の回りの環境を整えることです。

直接介護をすることではありません。

必要な介護サービスや施設を選んで
契約することが代表的です。


成年後見制度では、
これも成年後見人が決めることになりますので
本人が入りたい高級な施設などがあっても、
成年後見人がその施設と契約するかどうか、
そしてその高額な費用を支出してもらえるかどうか

成年後見制度のルール上ハードルは高いといえます。
財産の使いみちには制限があるからです。

一般的な施設よりも高い費用のかかる
高級な施設への入所はご家族が望んでも
家庭裁判所も成年後見人も否定的になる可能性は
大きいと思います。

一方で、任意後見契約でよく行われる方法として
自分のライフプランを任意後見契約書に書いておく、
または別の書面を作っておいて参照できるようにしておく、
といったことがあります。

例えば、
・将来入りたい施設
・財産管理の方針
・不動産処分のタイミング

など自分のライフプランを書面として残しておくことで
後見人や家庭裁判所に説明ができるようしておきます。

このようにすることで、
成年後見制度ではできなかったことについて、
かなり柔軟に対応ができるようになります。


まとめ

このように、任意後見契約をあらかじめ準備しておくことで

自分が選んだ任意後見人に、
自分が作ったルールで、
財産を管理してもらうことができます。

任意後見契約は保険のようなものです。

認知症にならず元気でいられるのに
越したことはありません。

しかし、万が一何の準備もなく
成年後見制度を利用することになると大変です。

ご家族と任意後見契約をしておいて、
たとえ認知症になっても
本当に必要になるまで申立てをしない

これが私がよくお勧めさせて頂く使い方です。

成年後見にしろ、任意後見にしろ
申立てをするまでは開始しません。

ただし、どうしても後見人を付けなければ
いけなくなるケースがありますので、
そのときは任意後見を利用できるようにしておく、
ということです。

単純ですが強力な方法ですので、
将来の成年後見制度の問題に立ち向かう方法として
任意後見契約について一度考えてみてください。


なお、成年後見制度の対策として有効な家族信託は、
もっと大きな目的を持った不動産管理・運用や
相続のための仕組みを作るのに役立ちます。

家族信託についてはまた機会を設けてご説明します。


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