現場で動いている司法書士が教える成年後見制度の実態



現場で動いている司法書士が教える成年後見制度の実態写真

最近、新聞や雑誌のニュースでも
成年後見制度が取り上げられることが増えてきました。

「専門家(弁護士や司法書士)の成年後見人が横領をする」

こんな印象を持たれている方も
多いのではないでしょうか??

しかし、実は成年後見制度の問題点は
これだけではありません。

成年後見制度を利用することで、
利用前には思ってもみなかった財産のトラブルに
巻き込まれている方はとても多いのです。

家庭裁判所の昨年度の統計によると
成年後見制度(成年後見・保佐・補助・任意後見)の
申立ては34,249件

これまでの成年後見制度の利用者数の累計は
平成28年12月末日時点で203,551人にも及び、
利用者は毎年増え続けています。

身寄りのない人が使う
という印象が強い成年後見制度ですが、
このような認識は間違いです。

たとえご家族と一緒に暮らしている方であっても
財産管理のために成年後見制度を
利用しなければいけないことがあります。


つまり、どんな生活をしている方であっても
成年後見制度は人ごとではありません

成年後見制度に関する5つの注意点

ほとんどの人が利用前には気付かない注意点や
多くの利用者が不満を持っている
成年後見制度の問題点を
実際に成年後見人にも就任している
現場を知る司法書士の立場から解説します。


1.申立てを色々なところで勧められる

成年後見制度の実態として、
利用を開始するときに
「さあ、成年後見制度を使おう」
という制度ではありません。

利用を開始する理由には、ほとんどのケースで
必要に迫られたそのきっかけがあります。

成年後見制度の利用のきっかけについて
昨年度の統計を見ると、

・預貯金等の管理・解約
・保険金受取
・不動産の処分
・相続手続
・訴訟手続等
・介護保険契約
・身上監護
・その他

があり、預貯金等の管理・解約が一番多く、
次いで身上監護となっています。

感覚的にちょっと難しいところではありますが、
昔とは違い最近では司法書士や弁護士など以前から
本人や判断能力の確認に厳しい専門家だけでなく、

銀行、保険会社、証券会社、不動産会社などの
財産を扱う民間企業もこの確認が厳しくなってきています。

家族だからといって、
代わりに様々な手続や契約に応じてくれるわけではありません。
(家族にはもともと代わりに財産を扱う権限はありません。)

そうすると、法律的には正当な権限を持つ代わりの誰か
いない限り財産に関する手続や契約ができないので
成年後見人を家庭裁判所に選んでもらうしかないのです。

つまり、本人の判断能力が低下してしまった場合、
ご家族様に対して、上記の窓口で
「成年後見制度を利用してください」
と利用を勧められることになります。

でも、成年後見制度の注意点をよく理解せず
一度申し立ててしまうと、
もう後戻りができなくなってしまいます。


2.成年後見人は自由に選べない

いざというときでも
「うちは家族がいるから大丈夫」
というお考えの方はたくさんいらっしゃいます。

しかし、成年後見人には
必ずご家族が選ばれるわけではありません

成年後見人を選任する権限は
家庭裁判所が握っており、
現在ではむしろ、専門家が選ばれるケースの方が増えています。

例えば、昨年度の統計では
親族以外の第三者が成年後見人に選ばれたのは71.9%です
10人中7人以上、ご家族以外の専門家が選ばれています。

成年後見制度を利用しようとしても
全く知らない司法書士や弁護士などの専門家が突然やってきて、
預金通帳や不動産の権利証を持っていってしまうことになります。

そして、一度選ばれた成年後見人は、
よっぽどの理由がないと替えることができません。

3.財産の使いみちに制限がある

おそらく、成年後見制度利用後の財産の使いみちは
ほとんどの利用者が不満を持つ部分です。

成年後見制度 = 本人保護 の制度です。

裏を返せば、
成年後見制度は本人以外の家族は保護されません。

よく問題となるケースとして、
成年後見制度の利用を開始された後

・相続税対策
・土地などの活用
・有価証券の購入
・生命保険への加入

など将来のご家族の生活のために
成年後見人が資産を活用したり、
投資などの運用を行うことは禁止されています。

ご家族が成年後見人の場合でも一緒です。

また、ご自宅など不動産の売却については
家庭裁判所の許可も必要です。

持っている資産の規模に関わらず
高級な介護施設に入ることや
ご家族の生活費の支出についても
家庭裁判所が問題視することもあります。

専門家の成年後見人もこのような運用に従うので、
同じようにご家族からすると
鬱陶しい存在に思うことがあるでしょう。

成年後見制度を利用すると
資産の活用が一切できない

これまで当たり前だった
財産の使いみちにも制限が出てくる

これはとても大きなデメリットになります。


4.家庭裁判所や成年後見人に財産が筒抜け

成年後見制度を利用すると
本人の財産状況や収支状況を
家庭裁判所に毎年1回報告する必要があります。

家庭裁判所は公的な機関であり
資料の閲覧も関係者に制限されていますが、
人によっては家族の大切なプライベートな情報を
見られている気分になることもあるでしょう。

また、成年後見人が第三者であれば
職務上これまでの預金通帳の履歴や
日常の収支状況も全て見られてしまいます。

成年後見制度の利用にあたっては、
このようなプライバシーに当たる情報が
他人に見られてしまうということも
あらかじめ認識しておく必要があります。


5.一度利用すると成年後見制度はやめられない

このような成年後見制度、
一度利用してしまうとやめられません。

最初に見たように、成年後見制度利用の
きっかけはとても単純なものです。

・預貯金を解約する
・不動産を処分する
・保険金を受け取る
・介護サービスの契約をする

必要な手続きが終われば
「もう大丈夫です」
と成年後見制度の利用をやめてしまうことはできません。

原則として、一度開始した成年後見は
ご本人がお亡くなりになるまで終わりません。

そして、成年後見人の権限は
限定的でなく当然に全財産に及びます。

必要なことをやってもらいたかっただけなのに、
成年後見人はあらゆる財産を管理し、あらゆる契約を締結できる
ものすごく強い権限を手に入れてしまうのです。


成年後見制度の問題点を回避するには?

もちろん、成年後見は必要な制度ではあります。

しかし、上記のとおり、
相続の場面で資産の活用や相続税の対策をしたくても
成年後見制度はその邪魔をしてしまいます。

このような成年後見制度の注意点や問題点は
まだまだ制度自体があまり認知されておらず、
勘違いも多いため、利用前には分からないことが多く
つい金融機関や専門家に勧められるがまま利用を開始してしまって、
困っておられるご家族がたくさんいるのです。

これらの問題点を事前に回避するには
成年後見制度を使わない財産管理の仕組みを
事前に準備しておくしかありません。

それが、

・任意後見
・家族信託

の2つの財産管理の仕組みです。

次回以降、これらの2つの仕組みについて
詳しく解説していきます。


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2つの国家資格で
資産活用の面から成年後見制度を使わずに
どのように財産を管理し承継するか
という仕組みの作り方をアドバイスしています。


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