司法書士に学ぶ、相続登記の必要書類
相続手続を進めていくと、ほとんどの場合
不動産の名義変更を行う相続登記をすることになると思います。
具体的には、相続した不動産を管轄する法務局に
相続登記の申請書と必要書類を提出して
不動産の名義変更を行います。
この相続登記の必要書類の中には、
他の相続手続と共通する分かりやすい書類もあれば、
相続登記独特のちょっと変わった書類を
法務局が要求することもあります。
今回は、一般的な相続登記の必要書類に加えて、
もしかするとあなたにも当てはまるかもしれない
注意しないといけないケースとこれに対応するための
必要書類についても解説したいと思います。
法務局が決めている相続登記の必要書類
一般的な相続登記で共通の必要書類
相続登記で一番多いと思われる
相続人全員が話し合って(遺産分割協議)
不動産の取得者を決めた後に、
相続登記を申請する場合の必要書類は以下のとおりです。
【相続関係を証明する戸籍謄本関係】
□被相続人の出生から死亡までの期間の戸籍・除籍・改正原戸籍謄本
□相続人の最新の戸籍謄本
※代襲相続が起こっている場合
□先に亡くなっている相続人の出生から死亡までの期間の戸籍・除籍・改正原戸籍謄本
□代襲相続人の最新の戸籍謄本
※相続が2回以上起こっている(数次相続)場合
□被相続人の後に亡くなった相続人の出生から死亡までの期間の戸籍・除籍・改正原戸籍謄本
□上記の相続人の最新の戸籍謄本
【遺産分割協議書関係】
□遺産分割協議書
□相続人全員の印鑑証明書
【相続登記で不動産を取得する(名義になる)相続人の書類】
□相続登記で不動産を取得する相続人の住民票
【不動産の価格証明(相続登記の登録免許税の計算に使用)】
□最新年度の固定資産税の評価証明書
※毎年4月1日に新しい年度の評価額になります。
概ね上記の必要書類を作成または収集すれば、
相続登記の申請書を作成後、必要書類を添付して
管轄の法務局に提出が可能となります。
しかし、相続登記においては、
この他にも一定のケースで法務局が独特の必要書類を定めており
相続登記を申請する前にこの点に注意する必要があります。
相続登記でちょっと注意すべき変わった必要書類
それが、
登記簿の所有者と被相続人の同一性を証明する書類
となります。
法務局は、
登記簿に記載されている所有者の住所氏名と
被相続人の本籍または住所と氏名
が一致するかどうかで同一人物かどうかを判断しています。
例えば、
登記簿:京都市○○区○○町○○番地 新風太郎
本籍地:京都市○○区△△町△△番地 新風太郎
のようになっていると、
相続登記の際に法務局は同一人物と扱ってくれません。
この場合は相続登記の申請書と一緒に
同一性を証明する書類を提出する必要があります。
これには、相続人が必要書類を準備できるかどうかで
下記のように段階に応じて書類が変わります。
第1段階
□住民票除票(前住所記載のもの)
または
□戸籍(除籍)の附票
上記のいずれかの証明書を収集し、
登記簿記載の被相続人の住所が出てくればOKです。
しかし、これらを取り寄せても登記簿記載の住所が載っていない場合、
または保存期間の5年が過ぎ証明書が廃棄されている場合
などは、次の書類を探すことになります。
第2段階
□登記済証(登記識別情報)※俗に言う権利証
通常は相続登記に権利証は必要ありませんが、
同一性が証明できない場合は、
その不動産について添付が必要になります。
もし、万が一この権利証も紛失していて
相続登記に添付できない場合は、
次の段階に移ります。
第3段階
□固定資産税の納税通知書(課税明細)
□相続人全員からの上申書+印鑑証明書
納税通知書には相続登記で住所の繋がらない不動産が
記載されている必要があります。
(私道などの非課税物件は記載されていません)
上申書とは、
「申請する相続登記に関して後日法務局に迷惑をかけません」
という旨を相続人全員が表明した書面です。
状況に応じて文面を工夫して作成します。
いかにも法務局的な必要書類になりますが、
これを提出しないと実務上は相続登記を受け付けてくれません。
第4段階
まれなケースではありますが、
上記の相続登記の必要書類全てを探しても、
同一性を証明できないことがあります。
実際のところ、この段階では個別対応となるため
この書類を準備すれば大丈夫、ということは言えません。
管轄法務局と事前に打合せを行い、
相続登記にどのような書類を添付するか調整することになります。
例えば、京都市であれば登記簿上の住所を
本籍地または住所とする同姓同名の人物がいないことの証明として
不在住証明書・不在籍証明書という証明書の発行が受けられますので
このような書類と、上申書+印鑑証明書を添付することで
法務局が相続登記を受け付けてくれることもあります。
■まとめ
このように、相続登記は一般的な必要書類に加えて
ちょっと変わった書類を法務局が要求することもあります。
特に、相続登記の際に
登記簿上の所有者と被相続人の同一性が問題になるケースは
少なくありません。
これらをきちんとチェックしてアドバイスするのも
相続登記の専門家としての司法書士の役割でもあります。
今回ご紹介した書類の中では、
・相続人の印鑑証明書
・登記済証(登記識別情報)
・固定資産税の納税通知書(課税明細)
上記以外の書類については、
司法書士が代理人として収集や作成が可能な書類です。
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